煉獄杏寿郎 煙立つ

向日葵のような人でした。
恐ろしいほど生命力に満ち溢れているのに、一寸目を離して夏が終われば、いつの間にかいなくなっている、入道雲のような人でした。
あの人は墨塗れの紙束を遺して、行ってしまいました。
そこにはたくさんの想いが綴られてありました。不器用で率直な言葉たちは、まるであの人そのもののようでした。
市松模様の少年が、あの人の最期を語ってくれました。
たくさんの人を救ったのだと、為すべきことを為したのだと、皆を護りぬいて散ったのだと。それはいつかあの人が話した理想に相違なく。けれどそれでも生きてほしいと言って泣いた私の頬に手を伸ばしてくれたあの人はもうどこにもいません。
今でも、ふと門を開けて帰ってくるように思われます。
あの人が好きだと言ってくれた料理を、忘れないように何度も思い返しては、台所がやけに広く感じられました。
覚悟はしていたつもりです。
けれど、いつか来るだろう時がいつまでも来なければいいと祈っていました。
あの人が座っていた縁側が、陽に照らされて、手を伸ばせばそこにいるようにも思えました。
蝉時雨がやけに遠くに聞こえます。
あなたがいない夏が来ました。