読んだり観たり遊んだりした感想置き場。かなり個人的な見解です。

  • 悪魔と夜ふかし

    ★★★★☆

    最後の、妄想の中で妻を手にかけたはずが、リリーを刺し殺してしまう主人公のワンシーンが非常に味のある良い作品だった。悪魔リグルスにとって自分を縛る枷でもあるリリーを、悪魔と契約した主人公が刺し殺す。そして気づいた時には何もかもが終わっている。非常に残酷で淡々とした、夢であってほしいくらいの日常へ帰ってきた描写だった。

    演出においても、きちんと70年代で起きうる描写でホラーを表現していて、逆に上手なCGでの演出がないこと(特に妻ミニーの部屋に向かう最後のシーンへの展開など)が、映像に現実味を帯びさせていてよかった。2023年作と知った時はびっくりした。でも現代版も見たいな〜。設定的に難しいか……。悪魔崇拝とかがホットだった70年代後半だからこその映画なので。

    博士がちゃんとリリーを大事にしつつ、最後のリリーの「証明したくないの?」という言葉に負けてしまったのは、やはり欲のある人間だなと。たぶんあの言葉はリリーじゃなくてリグルスが言ってたんじゃないかな。催眠状態でリリーは眠ってしまっていたのだろうし。結局博士がシスターとかではなく、研究者であったということも、欲求には抗えない伏線だったのかもしれない。

    なんだかんだで、もじゃもじゃ頭のプロデューサーがおそらく逃げ仰せてるのも現実味があってよかったですね。忠告してくれた人とかが容赦なく死ぬところとか。善悪関係なし、というところがカルト教団の教祖が言っていたところと被って、やはり悪魔はこうじゃないと!と思った。当たり前だけど、西洋の監督なので悪魔やその力への解像度が高くて良かった。面白い作品だった。

  • 国宝

    ★★★★★

    本当の意味でのテンポの良さを感じる作品だった。最初にゆっくりと始まったところからそのままテンポを保つのではなく、女形としての喜久雄の才覚を見せた後に、急転直下で組が襲われて父が死ぬ……そして紋を彫るという彼なりの自分の血筋への背負い方を見せつつ、その痛みと思いを分かち合う女の子の存在を示して、仇討ちを行って弟子入りまでの流れがあまりにも綺麗で感嘆してしまった。

    彼が言った「ミミズクは恩を忘れない」という言葉と裏腹に、彼は歌舞伎という芸能のために全てを投げ打ってしまった。だから彼は恩を忘れなかったけれど、恩を返すことはできなかったんだなあと。

    俊介の性根の良さは、やはり父と母にしっかりと愛され、ちゃんと父に認められるような才能があったが故のものだっただろうし、喜久雄の天賦の才は血とは関係のないもので、彼には極道の血が流れていたのだろうし、それらが何度も交差しながら大人になっていく様は、本当に万華鏡のようだった。

    万菊さんが喜久雄に注目していたのは、彼も血に頼らずに人間国宝になったが故なのかもしれないし、血がないからこそ、背水であり捨て身だからこそ、宿る覚悟というものがあるのだと思う。

    血があるからこそすぐに表舞台へと戻れた俊介は、その血が故に死ぬ運命になったとも見える。けれど、襲名の舞台で血を吐くという、あえて悪辣な言い方をするが、ハレの舞台を穢した父親と異なり、最期まで舞台をやり遂げた半弥は、芸の世界にのまれず、芸に生きた人間だったように思う。そしてそれはやはり喜久雄という、全てをかなぐり捨ててでも芸の道を貫こうとした化け物であり、そして同じ道を肩を並べてひた走った同胞が隣にいたからだとも思う。

    あの舞台で血を吐くまいとこらえて、なお決壊して吐血する半次郎の醜さは、この作品の中で一番私の心に響くものだった。凄まじい人間性を見たと心が震えた。この映画の中での一番感動した部分と言っていい。

    舞台に立った時、何かに見られているように感じたことが私にもある。本番の舞台でしか感じないそれ。あれはなんだったのだろう。私は呑まれるのが恐ろしくてそれから目を背けて舞台に立ってしまったけれど、もし、あの時それと顔を合わせて舞台に立てていたら、なにか違っていたのかもしれない。

    最後のスポットライトの演出は、私としてはなくてもよかったのではと思っている。役者としての国宝を描くのであれば、役者は舞台を降りるまで役者なのだから、紙吹雪のちらつく中横たわった花井白虎が、スポットライトに照らされてかすかに視界に舞う雪のようなきらめきを見つめつつ、あのシーン特有のキラキラとした音で終わったら、本当に良かったのにと思ってしまった。

    非常に面白い映画だった。女が舞台に立てない芸能であるからこそ、役者である男たちと、それを取り巻く女の在り方の違いが細やかに描かれているところも含めて、見応えのある作品だった。

  • シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション

    ★★★★☆

    冒頭から下ネタをこれでもかというくらいいろんな形で入れてあって、最初苦笑していたのがもう途中から吹っ切れてめちゃくちゃ笑った。

    最後15分くらいまで見せ場のパッチワークというか、ギャグとアクションと下ネタというとにかく面白いを数珠つなぎにした感じだったのが、急にちゃんと登場人物のしっとりした感情に触れていって、それがクライマックスにしっかりつながってたのは最高だったし、そこまではアクションシーンに、A級アクションではお目にかかれないようなギャグというかおもしろポイントが盛られていたのが、急にしっかりシリアスになる展開には「うそだろ……」とならせられて非常に面白かった。

    あと、敵や敵対人物や協力者などを含めた人間関係図が、きちんと活かされつくしてあってそこも非常にシナリオセンスがよかった。終盤に「え、どうなったの。なんでそこが協力を?」と謎を残してラストで回収する構図は、かなりスッキリ感があった。なんか都合よくみんなが銃を撃たずに待ってくれる部分とかはあったけど、まあそれはそれ。

    ただ、ハムスターがかなりひどい死に方をするのと、ひな鳥や人の死体もかなり雑な扱いを受けるので、動物好きというか、下ネタへの嫌悪も含めて道徳的観念の強い人にはまったくお勧めできない映画。

    大丈夫な人とげらげら笑いながら見るのに最高だと思った。Netflixの現代日本版を見ようと想って、見たフランス版だけど見てよかった。Netflixのも見ようと思う。